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2025年8月23日(土)、私立明治学院中学校・東村山高等学校の学校図書館(以下、図書館)を訪問しました。小川駅(西武拝島線・西武国分寺線)から徒歩8分、緑が豊富で暑さが和らぎます。
素敵な庭園を通り抜け、管理棟の3階にある図書館へ。
入口までの廊下掲示が素敵で、なかなか図書館にたどり着けません。
生徒さんの展示もあり(こちらは後程紹介します)、図書館前で20分程経過。
いよいよ館内へ。スタンプを押していただき、図書委員さんによる館内ツアーがスタートです。
天井が高く、明るく広い館内。蔵書は書庫も含め6万4千冊超とのこと。
それぞれの書架の手前には魅力的な展示があり、思わず本を手に取りたくなる仕掛けがいっぱいです。
書架の様子
先生のお勧め本授業ではわからない意外な素顔が見えることがあり、毎年楽しみとのことです
新書の部屋
圧巻で言葉を失います。
図書委員さんもはじめて見た時びっくりしたそうです。
新書コーナーの反対側には、歴代の図書委員会展示が掲示されています。新書の部屋の余韻に浸りつつ、図書館入口へ戻ります。
始めに触れた廊下掲示に、高校「家庭基礎」の課題もあり、生徒さんそれぞれの「幸せのお弁当」「ひとり暮らしの快適空間」がまとまっています。図書館の資料を活用し、お弁当のメニューや栄養バランス、住居の間取りなど調べたそうです。入館する前も食い入るように眺めてしまいましたが、図書委員さんの説明を聞くとますます面白く、ひとつひとつ見直しました。
入口すぐのコーナーには、雑誌・新聞のほかに、礼拝で紹介された資料やりんごの本棚、シャンティ国際ボランティア会の「絵本を届ける運動」の展示も。展示を見ていると自然とダイバーシティや国際協力への理解が自然と深まります。
英語多読コーナー
ブラインドブックコーナー
整頓された書庫
丁寧に案内してもらい大満足!図書委員さんの図書館愛がしっかり伝わってくるツアーでした。ご紹介できていない展示がまだまだあり、心残りです。利用者目線で工夫された本の並びや、わくわくする沢山の展示、使いやすく、楽しく、知らず知らずのうちに勉強になる、本当に素敵な図書館でした。 -
日駒の図書館へ行くときに、前に行ったことがあるという人から「カフェみたいな素敵な図書館ですよ」と聞きました。でも、言うて高校の図書館、カフェみたいだなんて言い過ぎなのでは? と思いながら向かうと、住宅街の中に不意に校門が現れ、いかにも学校の校舎という感じの建物がありました。(2025年7月24日訪問)
しかし玄関の自動ドアが開いて中に入れば、そこには広くて素敵な吹き抜けが広がっていたのでした。え、これ本当に高校の校舎?階段がいい感じに動線を誘っていて思わず昇りたくなりましたが、寄り道せずに一階の図書館に向かいます。自動ドアを二枚通り過ぎて入った図書館はなんと円形! え、これ本当に高校の校舎? 公共図書館ならともかく、学校の図書館って四角い部屋が多いからびっくりです。
壁際に並んだ本棚は、腰高のものも天井まであるものも緩く弧を描いて並んでいます。その前にいい感じのテーブルと椅子が並び、入ってすぐには円形の大きなソファもあり、なんとも優雅な空間が広がっています。
中央には円柱状の本棚があり、その前には円形のテーブルと、緩く弧を描くソファがあり…確かにこれはカフェっぽい!
しかもコイン式のコーヒーサーバーまであって、図書館でコーヒーが飲めるというのです。「カフェみたい」というのは決して過言ではありませんでした。疑ってごめんなさい。
円形の空間はゆったりと広く、机や椅子などの家具は木製で、本当にカフェのように寛いだ空間が広がっています。ただ、円形の壁側にしか本棚がないのなら、蔵書量はあまり多くないのかな? と思っていたら、円形の四分の一は普通の図書館のように本棚の並んだスペースがあって、蔵書もしっかり利用できるようです。
そしてこの図書館には、空気を見守ってくれるロボットもいるのでした。この時は加湿しながら閲覧席の辺りを自動で巡回していました。人や本棚を避けながら図書館をまわる様子がなんとも可愛いです。
居心地の良さが配慮されたカフェのような雰囲気のいい図書館は、ソファで寛ぎながら読書するもよし、新しくて綺麗な木の机で勉強するもよし。読書や勉強するだけで絵になりそうです。用がなくても来たくなるような、素敵な図書館でした。 -
2025年8月6日(水)午後、東京純心女子中学校・高等学校を訪問しました。
八王子駅からバスで15分。純心女子学園バス停で下車すると、丘の上には緑に囲まれたキャンパスが見えてきます。
八王子とあって校内にも自然がいっぱい。なんとカマキリがお出迎えしてくれました!
素敵なガーデニングスポットがありました。休み時間や登下校時に癒されますね。中高で2つの図書館に分かれていますが、両方とも利用することができます。
蔵書は中学校3万冊・高校6万冊。さらに閉架も合わせると10万冊もの蔵書があります。
まずは3階の中学校図書館へ。図書委員さんが受付と案内をしてくれました。絵本コーナーでは、日本語×英語の読み比べができます。
なんと図書館内には、カーペット敷きのリラックススペースが!探究活動の一環として全校で取り組むFYMプロジェクト ” FIND YOUR MISSION”という活動によってこのコーナーが作られたと、スタッフの図書委員さんが熱く語ってくれました。ほかにも様々なプロジェクトがあります。学校のHPにて詳しく知ることができます。
今はもう閉校してしまった、鹿児島の川内純心女子高校からはるばるやってきた、かわいらしいフランス人形が、生徒の皆さんの活躍を見守っています。
続いて2階の高校図書館へ。
コーナー表示が大きく、本を探しやすい工夫があちこちに見られました。
こちらにも「憲法カフェ」というFYMプロジェクトの取り組みが見られました。
高校図書館らしく、ずらっと新書が並ぶ書架に思わず圧倒されます。よく読まれている新書リストがあり、たくさんの中からでも本を選ぶのに役立ちます。
豊かな蔵書がありながら、ゆったりとくつろいだり自習したりできるスペースが確保されている、理想的な図書館でした。生徒の皆さんには、このような素敵な学校図書館をたくさん利用して、探究や学習、また趣味の読書などを楽しみ、充実した6年間を過ごしていただきたいです。 -
2025年7月29日(火)、田園調布学園中等部・高等部の図書館を訪問しました。
ひとことで言うと「生徒からも教員からも信用され、使われている図書館」です。
①生徒も教職員も利用しやすい場所にある図書館生徒昇降口に隣接する図書館は、職員室と同じフロアでもあり、また、図書館内の通路が教室への通路ともなっていて、休み時間には生徒が通るという、生徒の生活動線上にあります。
そして、その通路がなんとブラウジングコーナーになっています。
写真の中央が通路、左手に雑誌書架、右手ソファを挟んで展示スペース、奥が生徒昇降口、手前側に中学生の教室があります。
ソファに座って雑誌を広げたり、展示の本に触れたりすることができる配置になっています。
通路にソファ!
展示スペースには、授業に関する展示、学校行事に関する展示、時事に関する展示、季節の展示と数多くの展示が複数展開されています。
②調べるための図書館
昇降口から入ってすぐにあるカウンターは、開放的で明るく、司書になんでも気軽に聞ける雰囲気です。
カウンターの隣(写真奥手)には、検索コーナーがあり、デスクトップパソコンが並んでいて自由に触れます。
検索コーナーには著作権に関する注意書きの掲示や、検索に役立つツールが完備。
校内で使われているデータベース「ジャパンナレッジSchool」のトリセツも。
③中学生の読書活動図書館が各学年の教員団と協働して、読書教育に携わっています。
○中学1年「スタートライン」ブックリスト掲載書を読んで読書ノートに記録し、図書館に持参すると5冊ごとにシールがもらえる。
シールを集めるとよいことが。
リスト掲載本をブックトラックに別置。
○中学2年「14(イチヨン)」
14歳の1年間に読んでほしい14冊をリストアップ。
読むとシールがもらえ、感想を共有する掲示板がカウンター前に用意されています。
読書が一人だけの活動に留まらず、共有できるようになっていて、図書館からの「あなたの感想を聞きたい」という姿勢が感じられます。
○中学3年「15(イチゴ)」
15歳の中3生のために、中3の学年団の教員と共に司書が選んだ本。
この書架に並ぶ本は中学3年生限定利用の縛りがあります。
学年団のメッセージが熱い!
本を選ぶ生徒と司書が自然に会話を交わせるよう、カウンターのすぐ近くに各学年の書架やブックトラックが配置されています。
おとなから生徒への一方方向や押しつけではなく、生徒からの吸い上げの用意されている「双方向の読書活動」が、田園調布学園中等部の読書活動の大きな特色です。そこには「生徒の意見を聞こう」と耳を傾ける風通しのよい校風が表れています。
④校内での情報共有ステーション○教職員コーナー
通り抜け通路の雑誌書架にある「教職員コーナー」。
現役教諭の論文が掲載された学術雑誌や著作物が展示してあります。
これは校長先生からの依頼によるもので、同僚の活躍を知ることが意図されています。
特に若い教員が先輩や同僚の活躍に関心を持つよう、あえて職員室内ではなくソファに座ってゆったりと読める図書館のブラウジングコーナーに置くことになったと伺いました。
実際に、先生方が閲覧利用しているそうです。
職員室と同じフロアにあり、「通路にソファ」の田園調布学園だからこそできる教職員のための図書館活用ですね。
○生徒の美術作品の展示教職員コーナーの奥に立てかけてある油絵は、美術の授業で生徒が描いた絵画作品。通り抜けのブラウジングコーナーは、美術作品を並べた展示スペースにもなっています。こちらは美術科の先生からの依頼です。1枚目の写真にも、ガラス面に生徒の油絵作品が並んでいるのが見えます。生活動線上にある図書館だからこその美術展示。生徒の成果物を校内で共有できる場所が図書館だなんて素敵ですね。
○中1探究「マイテーマの探し方」生徒の成果物探究活動の入門として、中学1年生が実践している清教学園 片岡則夫先生提唱の「画用紙1枚のミニ調べる学習」の成果物をクラスごとに綴じて展示。
この授業を担当している学年の教員や司書教諭が、それぞれ個人名の賞を出しています。
校内で共有できるよう、こちらも通り抜けブラウジングコーナーにて展示中。
○中1理科「植物図鑑」生徒の成果物
検索コーナー隣のグラウンド側壁面に常設の理科の成果物展示コーナーには、卒業生の理科教育に関する新聞記事の掲示、理科の学習活動で生徒が使う文房具類の常備など、理科に関するものを集めています。
⑤在校生にぴったりの蔵書構成
吹き抜けの高い天井の明るく広々とした館内に並ぶ書架には、清潔感のある本がズラッと並んでいます。
開架書架の本はどれも鮮度が良く、古く汚れた本がないので、10代の女子生徒が躊躇せずに手を伸ばせます。
0類から9類まで偏りなくバランスよい蔵書構成となっていて、専任の司書が学校に合う本をよく吟味して入れていることが分かります。
社会状況の変化に伴って、新しい内容の本を購入し、古い内容の本を除籍し、本の新陳代謝がきちんと行われています。
演劇の書架には女子校らしく「宝塚」の表示がありました。
センシティブなジャンルについても、きちんと本が揃っています。
女子校なのでジェンダーの本が多いのはもちろん、有害な男らしさなど「男性性」に関する本もあります。
他人の目を気にせずにブラウジングできる棚並びで、他の人に知られず、ひとりでこっそりとデリケートな内容の本を手に取ることができる書架配置。
書架の間には一人掛けの椅子があり、見学時には利用者がゆったりと腰かけて本を読みふけっていました。
ロボットの棚は乱れていて、利用されていることを物語っています。
このように、田園調布学園の図書館は、生徒の生活動線上にあり生徒が普段使いしていて、教職員が「校内で共有したいものは図書館においてもらおう」と自主的に資料を持ってきたり、教職員と司書とが教育活動を協働したりと、学校図書館として十二分に機能している図書館です。
「図書館を見れば学校がわかる」と言われますが、蔵書構成から「偏見のない教養豊かな人を育む学校」であることがわかりました。 -
目黒駅で下車し、大通りを歩くこと5分、裏路地にはいるとそこに目黒日本大学中学校・高等学校があります。大通りとは一線を画した、学校にふさわしい静寂な空間が広がっていました。(2025年8月20日訪問)
学校全体がコンパクトな分、図書館もコンパクト。でも「小さいからこそ工夫できる」魅力があり、コロナ禍をきっかけにさらに工夫が進化していたのが印象的でした。
ICT支援員も常駐
入口に入ってまず目を引いたのは、ICTサポート窓口でした。
学校図書館は「情報センター」の役割を担っていますが、インターネットを介して知識を得ることが当たり前となった今、図書館内にICTサポート窓口があるのは非常に心強いことです。
単なる読書空間にとどまらず、調べ学習やICT利用を支える体制が整っているのは、生徒にとって大きな強みだと感じました。
コロナ禍が生んだ“人気の自習スペース”
コロナ禍で導入された閲覧席の仕切りが、そのまま「個別ブース型自習スペース」として定着していました。
仕切りは取り外し可能で、普段は自習席として、授業やグループワークの際には閲覧席に早変わり。限られたスペースを柔軟に活かすアイデアに感心しました。
生徒は利用する際に入口にあるホワイトボードにマグネットを置き、一覧表に自分の名前を書き込む方式です。
当日も自習目的で出入りする生徒が途切れず、図書館が「学びの拠点」として確実に根付いていることを実感しました。
訪問を終えて目黒日大の図書館は、コンパクトながらも時代の変化に合わせて進化している空間でした。
ICT支援員の存在と、自習席をめぐる細やかな工夫は、生徒たちの学びを支える力強い仕組み。また掲示も柱等を有効活用し、目で見て楽しめる展示もたくさん。「限られたスペースでも柔軟な工夫でここまでできるんだ」というヒントをたくさんいただきました。